この記事でわかること
  • 見える化の意味と、可視化との違い
  • 在庫の見える化で把握したい4つの情報
  • 紙・Excel・バーコード・システムの比べ方と移る目安
  • 見える化を進める5つのステップ
  • 続けるための記録ルールと、成果の指標

在庫の数や置き場所を確かめるのに、紙やファイルを探し、担当者に聞いて回った経験はありませんか。

棚卸のたびに帳簿と実物が合わず、原因探しから始まることもあります。

在庫管理の見える化は、在庫の状態を誰が見ても同じように確認でき、欠品や探す時間を減らす行動につなげられるようにする取り組みです。

押さえる情報は、在庫数量・入出庫の記録・保管場所・帳簿との差異の4つです。

紙やExcelでも始められ、差異や記録の遅れが続くようになったら、ハンディターミナルやシステムを足していきます。

この記事では、スノーピークビジネスソリューションズの現場経験も交えて、その進め方を整理します。

目次
  1. 在庫管理の見える化とは|誰が見ても在庫の状態が同じように分かること
    1. 在庫が見えないと起きやすい問題
  2. 見える化で把握したい4つの情報|数量・入出庫・保管場所・帳簿との差異
    1. ①在庫数量|今いくつあるか
    2. ②入出庫の記録|いつ・誰が・いくつ動かしたか
    3. ③保管場所|どこにあるか
    4. ④帳簿との差異|記録上の数と実際の数のずれ
  3. 見える化の方法を比べる|紙・Excel・バーコード・在庫管理システム
    1. 紙や棚札でできるアナログの見える化
    2. 次の方法へ移る目安
    3. どの方法から始めるか、現場の状況をもとに整理しませんか
  4. 在庫の見える化を進める5つのステップ
    1. ステップ1:目的と対象を絞る
    2. ステップ2:品番と置き場所のルールを決める
    3. ステップ3:記録するタイミングと担当を決める
    4. ステップ4:記録の手段を選び、小さく始める
    5. ステップ5:数字で見直す
  5. 見える化を続けるための記録ルールと、成果を確かめる指標
    1. 記録を続けるためのルール
    2. 成果を確かめる指標
  6. 在庫の見える化に取り組んだ例
    1. 例1:スノーピーク アフターサービス課の棚卸が半日程度に
    2. 例2:倉岡紙工が木型を探す時間をなくした取り組み
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ:在庫管理の見える化を進めるポイント
    1. 何から手を付ければよいか迷っているなら、現場の話をお聞かせください
  9. 参考資料

在庫管理の見える化とは|誰が見ても在庫の状態が同じように分かること

段ボール箱が整然と並ぶ倉庫の棚と、棚ごとに貼られた品番の札

在庫管理の見える化とは、在庫数量・入出庫の記録・保管場所を、担当者に聞かずに、誰が見ても同じように確認できる状態にすることです。

棚卸のときには、4つめの情報である帳簿との差異も、同じように確かめられるようにします。

野村総合研究所の用語解説では、見える化は改善活動の実施をゴールとした取り組みだと説明されています。

在庫でいえば、数量を記録して一覧にするところまでが可視化です。

その一覧を誰が見ても同じように読め、欠品や探す時間を減らす行動につなげられるのが見える化です。

見える化は、モノの置き方(現品)と記録(情報)の両方が整って初めて成り立ちます。

記録がなければ差異の原因を追えず、置き場所が分からなければ記録を現場で使えないためです。

中小企業白書2022によると、受発注や生産・在庫の情報を「紙媒体のまま管理している」企業は29.0%でした。

紙で管理している会社は、珍しくありません。

見える化の土台になるのは、道具の種類より、次の章で紹介する4つの情報を同じルールで残せているかどうかです。

在庫が見えないと起きやすい問題

品目や入出庫が増えると、在庫の情報が担当者の頭の中や手元のファイルにしかない状態(属人化)になりがちです。

そうなると、ほかの人は棚を探すか、担当者に聞くしかありません。

探したり聞いたりに手を取られるうちに記録は後回しになり、帳簿と実物が少しずつずれていきます。

ずれた帳簿をもとに発注すると、ある品番は足りず、別の品番は余るという、欠品と過剰在庫が同時に起きる状態になります。

見える化で把握したい4つの情報|数量・入出庫・保管場所・帳簿との差異

保管棚の各段に、置き場所を示す番号のラベルが貼られている様子

在庫の見える化で把握したい情報は、在庫数量、入出庫の記録、保管場所、帳簿との差異の4つです。

情報分かること記録するタイミング主に使う場面
在庫数量品番ごとに、今いくつあるか入庫・出庫・棚卸のたび発注の判断、欠品や過剰の確認
入出庫の記録いつ・誰が・いくつ動かしたかモノを動かしたその場数量の根拠の確認、差異の原因調査
保管場所どの棚・どの段にあるか入庫・棚移動のたびピッキング、探す時間の削減
帳簿との差異記録上の数と実際の数のずれ棚卸のとき記録精度の確認、再発防止の検討
在庫の見える化で把握したい4つの情報を示す図

①在庫数量|今いくつあるか

同じモノを、箱で数える人と個数で数える人がいると、数字が食い違います。

品番と数える単位(個・箱・kgなど)を先に決め、全員が同じ単位で記録します。

②入出庫の記録|いつ・誰が・いくつ動かしたか

履歴が残っていれば、数が合わないときに、どの動きで食い違ったかを後からたどれます。

③保管場所|どこにあるか

保管場所は、棚番やロケーションのように、誰が見ても同じ場所を指す番号で管理します。

当社の在庫管理システム「ZaiKo STARTER」では、棚番と品番を組み合わせて1つの管理単位として登録します。

これは、保管場所と品番をセットで管理する考え方の一例です。

④帳簿との差異|記録上の数と実際の数のずれ

帳簿と実物のずれの大きさは、棚卸差異率という指標で表せます。

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の「ロジスティクス評価指標の概要」での定義は、「期末(月末)棚卸時点での帳簿在庫と実在庫の誤差を率で表したもの」です。

差異は棚卸で実物を数えたときに分かり、ほかの3つの情報が正しく記録できているかを確かめる物差しになります。

見える化の方法を比べる|紙・Excel・バーコード・在庫管理システム

棚の前に置かれたバーコード読み取り用のハンディターミナルと、ラベルが貼られた段ボール箱

見える化の方法は、どれが優れているかではなく、品目数・入出庫の多さ・関わる人数で選びます。

記録を残す場所(紙・Excel・システム)と、記録のしかた(手書き・手入力・読み取り)は、組み合わせて使います。

下の表は、現場でよく使われる組み合わせを4つに分けたものです。

方法主な道具向いている現場把握しやすい情報手間と注意点
紙・棚札(手書き)棚札、棚カード、入出庫ボード品目が少なく、関わる人が限られる保管場所、棚ごとの数量手軽に始められる。品目や記入者が増えると記入漏れが出やすい
Excel(手入力)パソコン、共有ファイル品目数が中程度で、更新の担当が決まっている数量、入出庫の履歴集計しやすい。更新が遅れると実物とずれる
バーコード(読み取り)バーコードラベル、ハンディターミナル入出庫が多く、入力ミスを減らしたい入出庫の履歴、保管場所、棚卸の実数手入力が減る。ラベル貼りと運用ルールづくりが要る
在庫管理システム(一元管理)在庫管理システム、基幹システムとの連携品目・拠点・関わる人が多い4つの情報すべて情報が一か所に集まる。データの整備と連携の検討が要る

※ハンディターミナルは、バーコードを読み取って記録する携帯型の端末です。

※基幹システムは、販売・購買・会計などを扱う社内の中心となるシステムです。

紙や棚札でできるアナログの見える化

紙や棚札を使ったアナログの見える化は、最初の一歩として有効です。

  • 棚札・棚カード:品番と置き場所を棚に示し、入出庫と残数を書き込む
  • 入出庫ボード:当日の入庫・出庫の予定と実績を書き出す
  • 色分けラベル:入庫時期や保管の状態を色で見分ける
  • 発注点カード:在庫を発注点(この数まで減ったら発注する目安)の数だけ残した位置にカードを挟み、使う途中でカードが出てきたら発注する

棚カードは、日付・入庫数・出庫数・残数・記入者の欄があれば始められます。

モノを出し入れしたその場で書けば、在庫数量・入出庫の記録・保管場所を、紙のままでも棚の前で確かめられます。

棚卸のときは、棚カードの残数と実物を比べて帳簿との差異を確かめます。

次の方法へ移る目安

品目数や入出庫の件数に、何件を超えたら移るという決まった線はありません。

品目や件数が増えて、今の方法で下のような課題が続くようになったら、次の方法を小さく試す時期です。

  • 紙・棚札からExcelへ:棚ごとの残数を集めて回らないと、全体の数が分からない
  • Excelからバーコードへ:記録が後回しになって実物より遅れる、手入力の数字違いで棚卸のたびに差異が出る
  • ファイル管理から在庫管理システムへ:部署や拠点ごとにファイルが分かれ、同じ数字を何度も入力している

どの方法から始めるか、現場の状況をもとに整理しませんか

紙やExcelのまま整えるか、ハンディターミナルやシステムに進むかは、品目数や入出庫の多さ、関わる人数で変わります。

当社は、今のやり方を活かせる範囲と次に足す方法を、現場の状況をうかがいながら一緒に整理します。

現場改善でお悩みの方へ。まずはお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちら

在庫の見える化を進める5つのステップ

卓上に置かれた、在庫管理の手順を書き出したチェックリストと付箋、鉛筆

在庫の見える化は、目的と対象を絞るところから数字で見直すところまで、次の5つのステップで進めます。

ステップ1:目的と対象を絞る

どの情報から整えるかは、いちばん困っていることから決めます。

欠品が多いなら在庫数量と入出庫の記録、探す時間が長いなら保管場所から整えます。

棚卸の差異が大きいなら、差異の出た品番の入出庫の記録をたどり、原因を調べるところから始めます。

対象は、まず困っている品目や置き場所に絞ります。

あわせて、棚卸差異率・欠品の回数・探す時間などから成果を比べる指標を1つ選び、始める前の数字を記録しておきます。

探す時間のように、後からでは測れない数字もあるためです。

ステップ2:品番と置き場所のルールを決める

品番・棚番・数える単位・定位置を決め、誰が記録しても同じ書き方になるようにそろえます。

ステップ3:記録するタイミングと担当を決める

記録は、入庫・出庫・移動のその場で行うと、実物と記録のずれが小さくなります。

担当も、入庫・出庫・移動ごとに決めておきます。

中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営するJ-Net21のビジネスQ&Aも、在庫管理は在庫場所の明確化から始まるとしています。

そのうえで、入出荷を継続して記録する仕組みをつくることが重要とされています。

ステップ4:記録の手段を選び、小さく始める

手段は前の章の比較から選び、対象を絞って試します。

当社の創業当時、大手製造業の現場担当者様から「ハンディターミナルを使って、シンプルな在庫管理システムを作れませんか」というご相談をいただきました。

そこで、入庫と出庫だけができるシンプルな仕組みを作りました。

デモを見たお客様からは、「こういうシンプルな仕組みが欲しかった」という声をいただきました。

当社はこのとき、現場が求めているのは、まず小さく始められる仕組みだと気づきました。

この経験が、当社のGENBA改善システム「iSTARTER®シリーズ」のコンセプトになっています。

このシリーズは、現場に必要な機能だけを備えたベースシステムから導入し、現場の意見を反映しながら段階的に広げていく設計です。

ステップ5:数字で見直す

ステップ1で記録した数字と、同じ範囲・同じ測り方で比べます。

数字が改善していれば対象を広げ、変わらなければ記録のタイミングや手段を見直します。

見える化を続けるための記録ルールと、成果を確かめる指標

作業台に置かれた、バーコードラベルの束と記録用のクリップボード

見える化を続けるには、記録のルールを決めておくことと、数字で成果を確かめることが要ります。

記録を続けるためのルール

  • 差異が出たとき:帳簿の数を実数に直すだけで終わらせず、直した日と数、分かった原因を記録に残す
  • 後でまとめて書いている:紙なら棚カードを棚に下げてその場で書き、ハンディターミナルならその場で読み取る
  • 記録が判断に使われない:見る人と見るタイミングを決める

当社の在庫管理システム「ZaiKo STARTER」には、在庫リストで発注点を下回った品番を表示する機能があります。

見るタイミングを、たとえば発注を確認する日と決めておき、その日にこの表示を見る使い方ができます。

成果を確かめる指標

指標は、ステップ1で優先した情報に合わせて選びます。

  • 棚卸差異率:帳簿と実物のずれの大きさ。数量と金額のどちらで計算するかを決め、対象品目・期間・算出方法を始める前後でそろえて比べます。
  • 欠品の回数:必要なときに在庫が足りなかった回数。減ったかを見ます。
  • 探す時間:置き場所の確認にかかる時間。数日分を記録し、始める前後で比べます。
  • 棚卸にかかる時間:準備から差異確認までの所要時間。同じ範囲・人数で比べます。

在庫の見える化に取り組んだ例

小さなパーツが仕切り付きの棚に並ぶ、通路の狭い倉庫の内部

前の章で挙げた指標でいえば、例1では棚卸にかかる時間が、例2では木型を探す時間が大きく減りました。

例1:スノーピーク アフターサービス課の棚卸が半日程度に

スノーピークの製品修理を担うアフターサービス課では、計数担当と入力担当の2人1組で棚卸をしていました。

パソコンとスキャナを持ち歩いて狭い倉庫で作業し、Excelへの入力ミスや入力漏れ、集計の手間もありました。

当社は現場に入り、棚卸管理システム「TanaOrosi STARTER」と軽量のハンディターミナルを導入しました。

その結果、1日以上かかっていた作業は半日程度で終わり、2人1組の計数作業も1人でできるようになりました。

拠点ごとの棚卸の差異状況も、データで確認できます。

詳しくは、スノーピーク アフターサービス課の棚卸管理システム導入事例をご覧ください。

例2:倉岡紙工が木型を探す時間をなくした取り組み

中小企業白書2025には、熊本県嘉島町の株式会社倉岡紙工(従業員30名)の事例が載っています。

同社では、約3,000個の木型の在庫管理や位置情報の把握に労力がかかっていました。

そこで、木型にRFIDタグ(電波で情報を読み取れるタグ)を付けて管理しました。

その結果、木型を探す時間がゼロになったと紹介されています。

工具や金型のように、所在が分からなくなりやすいモノの管理は、RFID貸出管理パッケージの解説記事で取り上げています。

よくある質問(FAQ)

Q
Excel(エクセル)だけでも在庫の見える化はできますか?
A

できます。
品番・棚番・入出庫の記録を1つのファイルにそろえ、更新する人と時期を決めれば、在庫の状態を確認できます。
更新が遅れたり、ファイルが複数に分かれたりしてきたら、それが見直しの目安です。

Q
アナログな管理では、何から始めればよいですか?
A

まず、困っている品目や棚に絞り、棚札で品番と置き場所を示します。
入出庫を記録する場所と担当も、その範囲で決めます。
範囲を絞れば、その運用が続けられるかどうかを早く確かめられます。

Q
小さな倉庫でも、システムは必要ですか?
A

必ずしも必要ではありません。
品目や入出庫が少なく、関わる人も限られていれば、紙やExcelで足りることがあります。
差異や記録の遅れが続くようなら、システムの検討を始める時期です。

まとめ:在庫管理の見える化を進めるポイント

整理された棚の前に置かれた、チェックが入った在庫確認表

在庫の見える化は、4つの情報を誰が見ても同じ形で残し、欠品や探す時間を減らす行動につなげる取り組みです。

まずは、いちばん困っている品目や棚に絞り、置き場所と記録のルールを決めるところから始めてください。

  • 在庫数量・入出庫の記録・保管場所・帳簿との差異の4つを、同じルールで記録する
  • 方法は品目数・入出庫の多さ・関わる人数で選び、差異や記録の遅れが続いたら次の方法を足す
  • 始める前の数字を記録し、同じ測り方で比べて見直す

何から手を付ければよいか迷っているなら、現場の話をお聞かせください

当社は、1999年の創業以来、560社への導入実績と、累計2,300件のプロジェクト実績を積み重ねてきました。

「何から始めればよいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。

現場改善でお悩みの方へ。まずはお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちら

参考資料